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技術コラム

加工について

アルミニウム合金の優等生: A5052についてご紹介します。

アルミニウム合金は、その材質の特性の良さからさまざまな用途に用いられます。特に、A5052はアルミニウム合金の中でも汎用性が高い材料です。以前の記事ではアルミ材料の切削加工について取り上げましたが、今回はA5052の特徴や類似材料との比較、そしてバンテックでのA5052の取り扱いの実績をご紹介いたします。

A5052とは

A5052が分類されるアルミニウム 5000系は、アルミニウム(Al)にマグネシウム(Mg)を添加することで特性を向上させた合金です。マグネシウムの含有率には幅があり(0.5~5.6%)、含有率によって材質を調整できます。A5052はその優れた特性により、航空機、自動車、海洋、建築、食品加工装置、化学装置など、多岐にわたる産業で使用されています。

機械的特性

引張強さ (Tensile Strength): 約210-290 MPa (メガパスカル)
降伏強さ (Yield Strength): 約130-240 MPa
硬度 (Hardness): 約60-70 HB (Brinell硬度)
比重 (Density): 約2.68 g/cm³

化学的特性

A5052は高い耐食性を持っています。さらに、自然に形成されるアルミニウム酸化被膜は耐食性をさらに高める役割を果たします。この酸化被膜は薄く透明ですが強固で、さらにアルマイト処理と呼ばれる陽極酸化処理(アノダイジング)によって材質を強化することが可能です。

A5052が選ばれる理由

上述したようにA5052は耐食性や強度が高い等の特性がありますが、これ以外にもA5052が加工用の材料としてよく選ばれる理由をご紹介します。

市場流通性が高い

A5052は、その扱いやすさと多用途性により、競争力があり市場で広く流通しているアルミニウム合金です。
A5052の市場の流通性に関するポイントをあげます。

多様な形状がある

A5052は板材、コイル材、パイプ、押出形材など、さまざまな形状で市場に流通しています。このため、あらゆる用途で様々な加工方法に対応できます。また、同様の材質をもつ棒材として、A5056がよく用いられています。

規格に準拠している

A5052は多くの国際的な規格(例えば、ASTM B209、EN 485-2など)に準拠しており、これにより品質が担保されています。これらの国際規格により汎用性が高く市場に流通しています。

リサイクル性が高い

A5052はリサイクルが容易であり、環境に配慮した材料としても評価されています。リサイクルアルミニウムの市場は拡大しており、A5052の持続可能性が高まっています。

優れた加工性

A5052はその優れた成形性、切削加工性、溶接性、陽極酸化処理による強度の高さから、自動車、航空機、建築、食品産業など、多岐にわたる用途でさまざまな製造プロセスに対応でき、広く使用されています。
以下に、A5052の加工性に関する詳細を説明します。

成形性

A5052は冷間加工でも熱間加工でも容易に成形できます。プレス加工や深絞り加工、曲げ加工など、さまざまな成形方法に対応できます。冷間加工では高い延性を示し、複雑な形状の部品も精度良く成形可能です。

切削加工性

A5052はフライス加工や旋盤加工、穴あけ加工などの機械加工が容易であり、適切な工具と加工条件を用いることで、高精度な仕上げが可能です。切削加工中の熱発生が少なく、工具の摩耗も抑えられます。

溶接性

A5052は一般的な溶接方法(TIG、MIG、抵抗溶接など)で容易に溶接できます。特に、TIGおよびMIG溶接では良好な溶接品質が得られます。溶接後の強度と耐食性も高く、溶接部の仕上げも美しくできます。

陽極酸化処理

A5052は陽極酸化処理(アノダイジング)が容易であり、酸化皮膜を均一に密着させることができます。陽極酸化処理はアルマイト処理とも呼ばれます。この処理により、耐食性と外観の向上が図れます。染色や装飾用途にも適しており、多彩な色合いの仕上げが可能です。

他のアルミニウム合金について

A5052以外にも、様々なアルミニウム合金があります。その特性の違いにより、用途に応じて選択できるところもアルミニウム合金の特徴です。代表的な材料を紹介いたします。

A6063

A6063は、アルミニウム合金の一種で、特に押出成形による加工に向いています。主にマグネシウムとシリコンを含むアルミニウム合金であり、建築用の構造材や自動車部品など、さまざまな用途で広く使用されています。

主な化学組成

アルミニウム (Al): 97.5〜99.0%
マグネシウム (Mg): 0.45〜0.9%
シリコン (Si): 0.2〜0.6%

主な機械的特徴

引張強さ (Tensile Strength): 約180-240 MPa
降伏強さ (Yield Strength): 約110-160 MPa
硬度 (Hardness): 約60-70 HB (Brinell硬度)
比重 (Density): 約2.70 g/cm³

主な化学的特徴

A5052と似た性質があり、熱処理により強度を向上させることができる特徴があります。

価格

一般的に手頃な価格であり、多くの産業でコストパフォーマンスが高い材料として使用されています。

A7075

A7075は、高強度のアルミニウム合金で、特に航空宇宙産業で広く使用されています。この合金は、亜鉛を主要な合金元素とし、マグネシウム、銅、クロムも含有しています。A7075は、その高い強度と機械的特性により、構造材料として重要です。

主な化学組成

アルミニウム (Al): 87.1〜91.4%
亜鉛 (Zn): 5.1〜6.1%
マグネシウム (Mg): 2.1〜2.9%
銅 (Cu): 1.2〜2.0%
クロム (Cr): 0.18〜0.28%

主な機械的特徴

引張強さ (Tensile Strength): 約572-630 MPa
降伏強さ (Yield Strength): 約503-572 MPa
硬度 (Hardness): 約150 HB (Brinell硬度)
比重 (Density): 約2.81 g/cm³

主な化学的特徴

耐食性 : A7075は耐食性がやや低いため、特に応力腐食割れのリスクがあります。ただし、適切な表面処理や防食措置を講じることで耐食性を改善できます。

熱処理性: A7075は熱処理によって強度を大幅に向上させることができます。

溶接性 : 一般的に溶接には向きません。溶接後の割れや強度低下のリスクがあるため、溶接接合には注意が必要です。

価格

高強度と特殊用途向けの特性から、A7075は一般的なアルミニウム合金よりも高価です。

A2017

A2017は、アルミニウム合金の一種で、ジュラルミンと呼ばれています。特に耐疲労性と機械的強度に優れ、航空機や自動車の構造部品などで広く使用されています。主要な合金元素は銅であり、その他にマグネシウムやマンガンも含まれています。

主な化学組成

アルミニウム (Al): 91.4〜94.7%
銅 (Cu): 3.5〜4.5%
マグネシウム (Mg): 0.4〜0.8%
マンガン (Mn): 0.4〜1.0%

主な機械的特徴

引張強さ (Tensile Strength): 約415-540 MPa
降伏強さ (Yield Strength): 約275-475 MPa
硬度 (Hardness): 約120-150 HB (Brinell硬度)
比重 (Density): 約2.78 g/cm³

主な化学的特徴

耐食性: A2017は一般的に良好な耐食性を持っていますが、銅含有量のため、特定の環境では腐食のリスクが増します。適切な表面処理や保護コーティングで対策が可能です。

熱処理性: A2017は熱処理によって強度と機械的性質を向上させることができます。

溶接性: A2017の溶接性は中程度であり、溶接後の割れや強度低下のリスクがあるため、溶接時には適切な方法と管理が必要です。

価格

高強度アルミニウム合金の中では中程度の価格帯に位置しています。

A1050

A1050は、アルミニウムの純度が高い商用純アルミニウム合金です。この合金は、優れた加工性、耐食性、電気伝導性を持ち、食器や航空機部品、電子機器のケース、建築材料、電線の代替材料、エアコンの熱交換器など、さまざまな用途で広く使用されています。

主な化学組成

アルミニウム (Al): 99.50%以上

主な機械的特徴

引張強さ (Tensile Strength): 約60-105 MPa
降伏強さ (Yield Strength): 約25-50 MPa
伸び (Elongation): 約20-30%
硬度 (Hardness): 約20-30 HB (Brinell硬度)
比重 (Density): 約2.71 g/cm³

主な化学的特徴

耐食性 : A1050は非常に優れた耐食性を持っています。特に、化学薬品や環境の影響を受けにくいです。

電気伝導性 : 純アルミニウムであるため、非常に高い電気伝導性を持ち、電気部品や導電材料として広く使用されています。

熱伝導性: 高い熱伝導性を持ち、熱交換器や冷却装置に使用されます。

加工性

柔らかいため加工しやすい面がある一方、切削しにくい材質で、加工には熟練技術が必要です。

価格

純アルミニウム合金であるため、合金元素の含有量が少なく、比較的低価格で入手可能です。一般的なアルミニウム製品の中でもコストパフォーマンスが高い材料です。

アルミニウム合金の比較まとめ


アルミニウム合金を用いた加工を検討する場合は、まず最も広く普及しているA5052の使用をご検討ください。さらに熱処理を行って強度を高めたい場合にはA6063をお勧めします。航空機用部品など、さらに強度が必要な場合には、コストがかかりますが、A7075やA2017をお勧めします。そして、電気伝導性や熱伝導性が必要な特殊用途には、A1050をご検討ください。

当社での実績

品名:ベースブロック
材質:A5052
コメント:情報通信機器に用いる、高精度の製品です。材料選定にあたり高い強度は必要なく、汎用的な扱いやすい材料ということで、A5052を選択しました。5面に加工があり、寸法公差や幾何公差が厳しい為、加工用治具に工夫を凝らし、製作しました。

その他の加工事例についてはこちら「実績紹介」をご覧ください。

まとめ

バンテックでは、A5052などアルミニウム合金を材料に、マシニングセンタを用いた切削加工において豊富な経験・実績があります。お客様の要望に応じた対応が可能です。また、他社で断られた難加工も弊社では加工できた事例も多数あります。
A5052の加工はバンテックにご相談ください。

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