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技術コラム

加工について

ステンレスのマシニング加工が難しい理由

🧰 ステンレスのマシニング加工が難しい理由

① 被削性が悪い(金属として削りにくい)

ステンレスは硬く・粘りがあり・熱伝導率が低いため、
他の金属(アルミや鉄系)と比べて圧倒的に工具負荷が大きいです。

➤ 具体的な特徴

  • 硬い:切削抵抗が高く、工具摩耗が早い。

  • 粘る:切りくずが伸びて絡みやすく、仕上げ面を荒らす。

  • 熱を逃がしにくい:切削点の温度が上昇しやすく、工具寿命を縮める。

💬 現場でよくある声:

「切削音が重い」「工具がすぐ焼ける」「切りくずが巻きついてワークを傷つける」


② 材質によって特性が大きく異なる

同じ“ステンレス”でも、SUS304・SUS316・SUS430などで切削性が全く違う
特にオーステナイト系(SUS304・SUS316)は粘りが強く、加工硬化しやすいのが厄介。

➤ 加工硬化とは

削るたびに表面が硬くなり、次の刃がますます削りにくくなる現象。
結果、バリ・焼付き・寸法バラつきが起きやすい。


③ 工具寿命・コストの問題

切削熱・加工硬化・粘りの影響で、

  • 工具の摩耗・欠損が早い

  • 加工時間が長くなる

  • 仕上げ用・荒取り用の工具を使い分ける必要がある
    といった理由で、コストと工数がかさむ


④ 寸法精度・仕上げ品質の安定が難しい

ステンレスは熱変形・応力変化が大きいため、
削る量やクランプ方法で寸法が微妙にズレることがあります。

例:

  • 長穴加工で熱膨張 → 冷却後に寸法ずれ

  • 偏肉部の変形 → 仕上げ後に歪み発生


🔧 主な対策・現場の工夫

課題 対策・工夫
工具摩耗が早い コーティング工具(TiAlN, AlTiNなど)や超硬・CBN工具を採用
熱がこもる 冷却性の高い切削油を大量に供給(MQLやオイルミストも検討)
加工硬化 一発仕上げ・切り込み深め・送り速めで削る(なでるような加工NG)
切りくず絡まり チップブレーカ付き工具、切りくず排出性を考えたプログラム
仕上げ面が荒れる 工具突き出しを短く、振動を抑える、切削条件の最適化
寸法変動 仕上げ時に再クランプ、加工熱冷却後の測定を徹底

ステンレスの加工

適切なステンレス鋼を選択することによって、用途に応じた加工が可能になります。しかし、ステンレス鋼は難削材と呼ばれ以下のような特性により切削加工が難しい素材です。
・ステンレス鋼は熱伝導性が低く、切削加工時に熱がこもりやすいため、工具の焼付きやかじりを起こしやすいです。
・加工中に硬さが増す加工硬化と呼ばれる現象により、工具を破損しやすくなります。
・工具との親和性が高いため、切削加工時に発生する切り粉が刃物に溶着しやすく、他の金属に比較して加工精度を出すのが困難です。
このようなステンレスの特性を完全に理解し、豊富な経験と優れた加工技術が必要になります。

ステンレスを加工する際のポイント(注意点)

ステンレスの多くの種類の中から適切な材料を選択する
ステンレス鋼は多くの種類があり、目的に応じた適切な材料を選択する必要があります。一方で、ステンレス鋼の名称はJISで規定されていますが、規則性があまりなく、非常にわかりにくいため、経験が少ない方にとってはどの材料を選定してよいかわかりにくくなっています。よって、最初はステンレス材料の選択をする際は、JIS規格の内容をしっかり確認しましょう。また、特殊な用途でステンレス材を使用するケースは、材料メーカーや仕入れ商社などに適切な材料を提案してもらうとよいでしょう。
尚、当社では試作品のステンレス材については、材質の切削性の良いSUS303を使用することが多いです。お客様のご要望によっては、SUS304やSUS400番台、SUS600番台などを使用します。

ステンレスの種類によって加工方法を検討する
ステンレス鋼の熱伝導性の低さを補うために、適切な切削油などのクーラントを選んで温度が高くなりすぎないように調整する必要があります。また、強い力がかかると、硬くなる特性を持つ種類があるため、工具が破損しないように、切削加工の内容に応じて切削速度の調整やバイトの選択が重要になります。
当社では、SUS304やSUS400番台、SUS600番台などを使用する際は、切削性の悪さや反りの発生を考慮して、加工速度をやや低くしたり、切込み量を少なくしたりします。尚、切削性が悪いと工具の摩耗も速くなるため、その分加工単価が上がります。

当社のステンレスの切削加工事例のご紹介

製品名:携帯電話カバー
材質:SUS303
加工のポイント:
リバプールFCの優勝時の記念で計画された、高級携帯電話のカバーの試作品となります。高精度が要求された製品の試作です。
ボタン部分や画面の箇所で嵌め合いがあり、製品が反ってしまうと入らなくなってしまいます。材質はSUS303を選定しましたが、カバーの肉厚が薄く反りの影響を考慮して加工する必要がありました。負荷を与えないような加工治具の製作や、切削油の選択、エンドミルの種類にも気を付けながら加工しました。

その他の加工事例についてはこちら「実績紹介」をご覧ください。

ステンレスの切削加工はバンテックにご相談下さい

バンテックではステンレスの切削加工の豊富な経験・実績が多くあります。
お客様のご要望に応じて、様々なステンレスで切削加工が可能です。他社ではお断りされるような難加工の実績もあります。
自社で設計・デザインも行っているため図面のない状態からのご相談も大歓迎です。
アルミ加工・ステンレス加工、金属加工はバンテックにご相談下さい。
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