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技術コラム

海外調達について

金属3Dプリンタの種類と特徴

① 粉末床溶融結合方式(PBF:Powder Bed Fusion)

例:SLM / DMLS / LPBF / EBM

金属粉末を薄く敷き、レーザーや電子ビームで溶融

特徴

  • 高精度・高密度(切削並みの精度)

  • 複雑形状・内部流路が得意

  • 航空宇宙・医療・金型に多い

メリット

  • 寸法精度◎

  • 機械特性が良好

デメリット

  • 装置・粉末が高価

  • 造形サイズに制限

  • サポート除去が必要

主材料

  • SUS316L、Maraging鋼、Ti-6Al-4V、AlSi10Mg など


② 指向性エネルギー堆積方式(DED)

例:LENS / DMD / WAAM

ノズルから粉末またはワイヤを供給し、レーザー等で溶融

特徴

  • 大型造形・肉盛り補修向き

  • 切削機と組み合わせ可能(ハイブリッド)

メリット

  • 大型部品が作れる

  • 修理・肉盛りが可能

  • 材料歩留まりが良い(特にワイヤ)

デメリット

  • 精度はPBFより劣る

  • 表面粗さが大きい(後加工前提)

主材料

  • 炭素鋼、工具鋼、SUS、チタン、インコネル


③ バインダージェット方式(Binder Jetting)

粉末にバインダー(接着剤)を噴射 → 焼結

特徴

  • 造形が高速

  • サポート不要

  • 量産向き

メリット

  • 生産性が高い

  • 大型造形も比較的容易

  • コストが下がりやすい

デメリット

  • 焼結収縮による寸法変化

  • 強度はPBFより低め

主材料

  • SUS、工具鋼、銅系


④ 材料押出方式(MEX / FDM金属)

金属粉末+樹脂を押出 → 脱脂・焼結

特徴

  • 低コスト導入

  • オフィス設置可能

メリット

  • 初期投資が小さい

  • 試作向き

デメリット

  • 精度・強度は限定的

  • 焼結工程必須

主材料

  • SUS、工具鋼


⑤ シート積層方式(Sheet Lamination)

例:超音波積層(UAM)

金属箔を超音波で接合

特徴

  • 熱影響が少ない

  • 異種金属積層が可能

メリット

  • 変形が少ない

  • センサー埋め込み可能

デメリット

  • 形状自由度が低い

  • 装置が特殊


用途別おすすめ整理

用途 適した方式
高精度部品・金型 PBF
大型部品・補修 DED
中量産・コスト重視 バインダージェット
試作・社内検討 金属FDM
特殊用途・研究 シート積層

金属3Dプリンタ(AM)と**切削加工(SUB)**の使い分けは、
**「形状・数量・コスト・精度・納期」**で判断するのが実務的です。
加工業・調達目線で整理します。


① 基本的な考え方(結論)

👉 迷ったら「切削が基本」
👉 切削で無理・非効率な部分だけ3Dプリンタ


② 形状での使い分け

金属3Dプリンタが有利

  • 内部流路(冷却、水管、ガス流路)

  • アンダーカット形状

  • 一体化構造(部品点数削減)

  • トポロジー最適化形状

  • 肉厚が不均一・複雑

▶ 例

  • 金型冷却回路

  • 軽量化ブラケット

  • 熱交換部品


切削加工が有利

  • 単純形状(ブロック・プレート)

  • 深穴・高精度穴

  • 平面度・同軸度が厳しい部品

  • 鏡面・摺動部

▶ 例

  • 治具・ベース部品

  • シャフト・プレート

  • 一般機械部品


③ 精度・品質面

項目 金属3Dプリンタ 切削加工
寸法精度 △(後加工前提)
表面粗さ
機械特性 ○(条件依存) ◎(安定)
再現性

👉 最終精度が必要な面は切削仕上げが必須


④ コスト・数量

数量 最適工法
1~数個 3Dプリンタ or 切削
数十個 切削有利なケース多い
量産 切削・鋳造・鍛造

注意点

  • 金属3Dは「形状が複雑なほどコスパが良くなる」

  • 単純形状は切削が圧倒的に安い


⑤ 納期・リードタイム

金属3Dプリンタ

  • 設計確定後すぐ造形

  • 工程短縮(型不要)

  • 試作が速い

切削加工

  • CAM・治具準備が必要

  • ただし加工時間は短い

👉 試作スピードは3D、安定量産は切削


⑥ 実務で多い「ハイブリッド活用」

王道パターン

  1. 3Dプリンタで荒形状造形

  2. 重要部位のみ切削仕上げ

効果

  • 工程削減

  • 工具到達不可部をAMで解決

  • 精度は切削で担保


⑦ 判断フローチャート(簡易)

1️⃣ 内部流路・一体化が必要?
YES:金属3D

2️⃣ 高精度・鏡面が必要?
YES:切削

3️⃣ 数量が多い?
YES:切削 or 他工法

4️⃣ 試作・設計検証?
YES:金属3D


⑧ 加工業・調達目線の一言まとめ

「3Dプリンタは切削の代替ではなく、切削を活かすための前工程」

中国調達・外注の場合は

  • AM造形は海外

  • 仕上げ切削は国内

という使い分けも非常に多いです。

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